11月22日(土)
黒岩比佐子【音のない記憶 ろうあの天才写真家 井上孝治の生涯】を読む。この本の22ページの冒頭に「人間の曖昧な記憶に比べて、写真が提示する情報は、ディテールまで克明に語ってくれる。また、セピア色の古い写真はどこか謎めいていて、見る物の想像力をかき立てずにはいない。まさに、写真は過去に開かれた記憶の扉でもある。」この本には、有名な写真家・木村伊兵衛なみの写真が何十枚も掲載されている。それほど、アマチュアでありながらスゴイ写真家であったことが分かる。その井上孝治の生涯を描いた作品・本だ。三歳で事故にあいろうあ者になった孝治が、写真というものに出会って、それに乗り込めりこんで行くことになる。聾学校時代から亡くなるまで、その好奇心の旺盛さだ。日本に被写体がないと感じると返還前の沖縄、そしてアメリカ、ヨーロッパまで出掛けている。家族の理解があって出来たことだろう。亡くなるまで、写真の情熱がなくならなかったことをこの本は伝えている。この本にするに当たって、相当な取材、資料集めが必要だったかが想像できる。それと言うのも、黒岩比佐子さんの講演を春先に聞いたからである。そのときは、女性写真家を探し出す話だった。この本に掲載されている写真を眺めていると、その時代のことが、決して裕福でないが人間には明るい眼差しがあるのだ。人間の本来もつ感情が、その何か、豊かなものが写っているのだ。午後から、御茶ノ水へ。東京古書会館の古書展を行く。和田芳恵【樋口一葉伝 一葉の日記】昭和18年、を買いたかったが、あまりにも状態が酷かったので止めた。200-だから買っとけば良かったと後で思う。その後、神保町をぶらついて、ヒナタ屋で休憩して帰る。